「ナイジェリア軍事政権期における制度エンジニアリングと『民族問題』」
<第4班第1回研究会>
■報告者 :落合雄彦 龍谷大学法学部教授
■開催場所 :龍谷大学深草キャンパス 紫英館第1会議室
■開催日時 :2006年7月1日(土)15:00-18:00
■議事録番号 :060401
【報告の概要】
 近年ナイジェリアでは、地方レベルでの政治主導権をめぐる暗殺や襲撃事件、産油地域における少数民族と国軍・警察の衝突等の暴力事件が多発している。その一端にはナイジェリアの諸民族間における対立の問題がみられる。報告者は、この「民族問題」の背景にある構造的要因を、同国の軍事政権期(1966〜1979年、1984〜1999年)に実施された制度エンジニアリングとの関連で論じた。
 ナイジェリア軍事政権期にみられた特徴のひとつは、財源配分システムの大幅な中央集権化である。財源(主に石油)を一元的に管理し、それを州や地方行政区(LGA)へ分配(シェアリング)することで、国を構成する諸集団の欲求を充足し、支配の正当性と政権の安定を確保してきた。このシステム下で、分配される財源のいわば「受け皿」となった州やLGAは、要請があるたびに、次々と新設された。また同様に、公職ポストも多様な集団に広く分配されてきた。
 このような軍事政権による制度エンジニアリングは、一部のコミュニティや民族の不満の緩和に貢献したが、反対に、それまでは亀裂がみられなかった、「同一民族」とされてきた人々のなかに対立を生み出す引き金ともなった。多様な集団からなるナイジェリアにおいて、コミュニティや民族ごとに財源や公職ポストを分配するという方法は、そもそもだれがコミュニティや民族の成員なのかという、民族的アイデンティティをめぐる問題を内包しているためである。その結果、逆に不公平感、疎外感をもった集団が出現し、こんにち「民族問題」となるまで発展している。

【議論の概要】
 民族問題が深刻な地域とそうでない地域があるのかなど、ナイジェリア国内の地域差を尋ねる質問が多かった。石油産出地である東部とそれ以外の地域、連邦政府の要職の多くを占める北部出身者とそれ以外の地域の出身者といった対立の構図が考えられる。報告者は、実際にそのような対立の可能性はあるが、ナイジェリアの軍事政権は常に分配によってバランスを保ってきた点を強調した。また、ナイジェリアには分配できるだけの資源(石油)があった点も無視できない。参加者からはさらに、その分配を重視するナイジェリア政府の姿勢は、ナイジェリアの政治的風土から生まれているのか、あるいは政治権力の主体がさまざまな権力の寄せ集めであり、常にバランスを取っていないと崩壊する恐れがあるからなのか、といった制度エンジニアリングを「支えるもの」に関する質問も出た。
■資料詳細 <資料1
 
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