「二つの緑の革命:『貧困と紛争』への地域研究的アプローチ」
<第4班第1回研究会>
■報告者 :阿部健一 京都大学地域研究総合情報センター助教授
■開催場所 :龍谷大学深草キャンパス 紫英館第1会議室
■開催日時 :2006年7月1日(土)15:00-18:00
■議事録番号 :060401
【報告の概要】
 報告者は、4班の研究課題である「貧困と紛争」というテーマを食糧生産との関係から考察する発表を行った。発表の焦点は、「緑の革命」のスローガンのひとつとして掲げられた「Bread and Peace」(食糧と平和)という考え方である。
 周知のように、緑の革命とは、高収量品種の作物の導入や化学肥料の大量投入により、米や小麦などの穀物の生産性を飛躍的に向上させ、前代未聞の食糧増産を達成したことを指す。しかし、緑の革命の評価は、食糧増産の面だけに留まらなかった。緑の革命は、貧者へ十分な食べ物を与えることで、世界の平和に貢献するとも謳われたのである。緑の革命を多くの発展途上国が推し進めた背景には、貧困にあえぐ農民たちによる「農民革命」を防ぐという政治的意図もあった。実際、緑の革命による食糧の増産は現実のものとなったが、次第にその「負」の側面も指摘されるようになった。階層間の格差の拡大、環境の悪化、灌漑のための水供給をめぐる対立などである。
 報告者はさらに、この「緑の革命」と近年の遺伝子組み換え作物の生産(「第二の緑の革命」)との比較を試みた。両者は科学技術に依拠した農業革命である点は共通しているが、第二の緑の革命では、第一の緑の革命の際にみられた政治戦略(国家の安全保障)という側面は薄まり、経済のグローバル化という大きな流れの中に位置づけられるようになった。第二の緑の革命の時代を迎えた現在においても、貧困緩和の問題は、錦の御旗として掲げられたまま、依然解決をみていない。
 そこで「Bread and Peace」という考え方を振り返ってみれば、第一の緑の革命において、それは農民革命を恐れた国家がスローガンとして掲げただけで、実際に人々の間の平和に影響したかどうかは疑わしいと言わざるをえない。第二の緑の革命では、すでにこのフレーズは影を潜めている。近年「人間の安全保障」という言葉が開発や環境の分野で叫ばれているが、これも一時的な掛け声だけで消えていく可能性が高い。包括的な解決につながる具体策は、東チモールをはじめとする世界各地で模索されている。

【議論の概要】
 参加者からは、報告者が「第二の緑の革命」と呼ぶGM作物の可能性と危険性に関する質問が相次いだ。国際援助の場で人体に対する影響がまだ不確かなGM作物を用いることに対する是非、GM作物の種子が在来の種子と交配する危険性とそれを回避する方策などについてである。
■資料詳細 <資料1
 
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