「インドにおける亡命チベット人の国民統合−中央チベット行政府の取り組みをめぐって−」
<第1班・第2班合同研究会(第2回研究会)>
■報告者 :榎木美樹(龍谷大学経済学研究科研究生,Central Institute of Tibetan Higher Studies)
■開催場所 :龍谷大学深草学舎8号館4階会議室
■開催日時 :2006年9月21日(木)13:00−17:00
■議事録番号
ディスカッサント:中村尚司(龍谷大学経済学部教授)

 報告者の榎木氏は、インドにおける亡命チベット人が中央チベット行政府(Central Tibetan Administration.以下CTA)の取り組みによって、「チベット人性」を確立し、ひとつの「国民」集団として統合されていく過程について紹介した。
1959年の亡命以前のチベットは、部族意識と仏教を基軸とする緩やかな共同体にすぎなかった。それに対しCTAは祖国の独立回復を目標に民族の結束を維持するという視点を有していた。かれらは祖国への早期復帰を当初目指していたが、亡命生活の長期化が確実となったことから難民の経済的自立性の確保を目指し、その上でチベット仏教を基盤としたチベット文化の伝統と保持を目指しながらも、同時に人権や民主主義といった普遍的価値を持つ概念を導入していった。
こうしたCTAの施策によって、亡命チベット人は「難民」でありながら経済的自立に一定程度成功すると同時に、「チベット人性」の確立にもある程度成功した。これにはCTAの施策の成功のみならず、亡命によって亡命国の人々から「チベット人」と見なされたこと、それまで交流のなかった他部族同士が共通の言語や生活習慣を持つようになったことなど、亡命の長期化の影響もある。また、統合のシンボルとしてダライ・ラマの存在も重要な役割を果たした。
榎木氏はこのようなCTAの「国民」統合政策を検討した上で、チベット・ナショナリズムの創出に関する諸項目を検討し、報告を終えた。
 ディスカッサントの中村氏は、CTAサイドのみならず、一般の人々の声をより取り入れた上で、「国民」統合について検討していくべきではないかと指摘した。
 討論では、受け入れ国であるインド政府のCTA、亡命チベット人に対する政策はどのようになっているのか、明らかにする必要があるのではないかという指摘がなされた。また、問題点が不明確であるという指摘がなされ、例えば亡命チベット人内部で伝統的教育を受けない層がインドで成功することによるコミュニティ内部からの崩壊の危険性等、問題点をより明らかにすべきであるとの指摘があった。
■資料詳細 
 
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