「日韓中世論は、米国の影響をどう見ているか?−アジア・バロメーター2004年による分析」
<2006年度智光館完成記念講演?>
■報告者 :猪口孝(中央大学教授)
■開催場所 :龍谷大学瀬田キャンパスREC小ホール
■開催日時 :2006年6月25日 15:00-18:00
■議事録番号 :060001
【報告の概要】
 猪口氏は、まず、氏が中心となって2003年から実施しているアジア全域(東・東南・南・中央アジア)の10カ国を対象とする大規模な比較世論調査(「アジア・バロメーター」プロジェクト)について、実施にいたる経緯や大規模比較世論調査を実施するための資金集めの際の苦労、各国語に質問を翻訳する際にかかるコストの甚大さといった裏話を交えて、詳しく解説した。「アジア・バロメーター」プロジェクトは、アジアに住む一般の人々の日常生活を継続的に定点観測しデータ化することにより、各国の人々の日常生活に組み込まれた価値感や規範を探ろうとする試みである。プロジェクトが対象としたアジア諸国の中には、これまで本格的な世論調査が実施されたことのない国もあり、そういった国々の政治文化や社会変動を知るための第一歩となるデータ収集の重要性について、猪口氏は強調した。また、シンガポールや日本、韓国など所得が高い国ほど国民の幸福度が低く、ウズベキスタンやフィリピンなどの低所得国のほうが国民の幸福度が高いといった興味深い調査結果についても紹介した。幸福度調査をめぐっては、宗教が生活に浸透している国ほど幸福度が高く、そうではない社会では幸福度が低いといった例についても述べた。
 日中韓世論の対米意識については、日本が親米的で韓国が反米的、中国は両者が混合しているといったメディアにおける米国の扱われ方から引き出される仮説が、アジア・バロメーターが2004年度に実施した世論調査結果からは支持されないとした上で、指導者の性格の違いや流砂のように意見が変化する有権者の性質、グローバリゼーションの浸透度と速さの違いなど、いくつかの解釈がありうるとして、今後さらに世論調査結果を分析する必要があるとした。また、「アジア・バロメーター」プロジェクトによる世論調査結果は、ホームページ上でデータ公開する予定であること、このデータを今後さまざまな研究者が活用することで、アジア諸国の政治文化、社会変動の理解に役立てて欲しいと考えていることを強調した。

【議論の概要】
 討論では、?世論調査が実施されていないアジアの国々に対して、アジア・バロメーターの調査結果がどのように還元されているのか、?日中韓世論の対米意識に関する比較調査結果について、米国の影響力が好ましいとも好ましくないとも考えていない層、すなわち「どちらとも言えない」という態度を取る国民が多い国と民主主義の成熟度に正の関連性が存在すると考えるかどうか、について質問が出た。これらについて猪口氏は、?英文での報告書の刊行やプロジェクトに参加した各国の研究者が現地メディアなどを通じてプロジェクトを紹介し、世論調査結果に基づく論文・新聞記事などを発表することで、世論調査対象国社会への成果の還元を図っているとし、また、?日本の場合など、政治的質問に対してきわめて低い関心しか示さないことは、民主主義の成熟度の問題とは基本的には関係がないだろう、との見解を示した。
  
■資料詳細 
 
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