「平和研究について」
<2006年度第1回国際ワークショップ>
■報告者 :ヨハン・ガルトゥング(TRANSCEND代表、前オスロ国際平和研究所所長)
■開催場所 :龍谷大学瀬田学舎 3号館101号室
■開催日時 :2006年10月23日(月) 15:10-16:40
■議事録番号 :060002
 ガルトゥング教授は、自らが平和研究を志すに至った理由について人生を振り返りつつ述べた後で、従来の安全保障(セキュリティ)パラダイムとは異なる平和(ピース)パラダイムの重要性について説いた。
 ガルトゥング教授によれば、氏が平和研究を志すに至るには3つのきっかけがあった。第一は、1940-45年のナチスによるノルウェー占領下において、父親が強制収容所へと連れ去られる、という経験をしたことである。少年時代のこの痛ましい経験を通じて、ナチスによる占領という歴史的事実がきわめて個人的な経験と結びつくことになったのだった。第二は、1948年1月30日に、イギリス帝国からの解放闘争を率いたインドの指導者ガーンディーが暗殺されたことである。非暴力抵抗運動を説き、最後まで楽観主義を貫いたガーンディーの思想は、氏にとって新たな可能性を示してくれるものと思われた。そして第三のきっかけが、1951年、「良心的兵役拒否」の選択をすることを決意したことである。兵役が当然の国民的義務と考えられている社会において、「良心的兵役拒否」を貫くためには、確固たる決意と信念が必要だった。戦争を悪とみなして、戦争反対を訴えるだけでは不十分であり、平和構築と和解をもたらすための建設的・積極的な代替的パラダイムを打ち出す必要があったのである。
 当時、Peace StudiesあるいはPeace Researchと呼ばれる研究分野はまだ確立されておらず、中心となっていたのは安全保障研究(Security Studies)だった。だが、ガルトゥング氏は、自国の強化による安全保障を説くパラダイムでは世界に真の平和をもたらすことはできないとして、新たに平和パラダイムを提唱するようになった。このパラダイムにおいて、平和とは、複数の当事者(国)に存在する関係性の問題として理解される紛争が存在していない状態を指す。平和研究の課題は、紛争の原因を突き止め、建設的で想像力に満ちた、紛争解決のための調停や仲裁方法を追求することである。このような調停の一例として、ガルトゥング教授は、長い間国境付近の土地をめぐって争ってきたエクアドルとペルーに対して、その土地をバイナショナル・ゾーンとし、国立公園を設立して両国が共同で管理運営する体制を打ち立てたことを紹介した。この地域は、今日、両国の商人たちが自由に行き来して交易を行う、一種の自由経済地域となっているという。
  
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