「非暴力、平等、国民国家の論理−ヨハン・ガルトゥング教授との対話から」
<2006年度国際セミナー>
■報告者 :中村尚司(龍谷大学経済学部教授)、長崎暢子(龍谷大学国際文化学部教授)、清水耕介(龍谷大学国際文化学部助教授)
■開催場所 :龍谷大学瀬田学舎REC101号室
■開催日時 :2006年10月23日(月) 17:00-19:00
■議事録番号 :060003
 本国際セミナーは、中村尚司(龍谷大学経済学部教授)、長崎暢子(龍谷大学国際文化学部教授)、清水耕介(龍谷大学国際文化学部助教授)の3氏がそれぞれの観点から平和や非暴力に関する問題提起を行い、それに対してガルトゥング教授が自らの意見を述べるという形式で行われた。
 中村氏は、「平和」という概念について、たとえばPax Romana(ローマ人の支配による平和)という言葉に象徴されるように、それが常に暴力と関連したものとして理解されているとし、このようなネガティブな含意を持つ「平和」という言葉を用いるのではなく、新しい概念を提唱する必要があるのではないか、と提起した。長崎氏は、ガルトゥング氏自身もガーンディーに関する著作をいくつか出版していることに触れ、ガルトゥング氏のガーンディー理解に関わる大きな貢献を賞賛した。さらに彼女自身の研究からガーンディーの非暴力思想がもともと南アフリカにおける少数派インド人の権利獲得のための闘争から生まれたことを強調し、他方でそこに、インドに戻ってから多数派の大衆によって独立を獲ち取る際のディレンマがあったのではないか、とガーンディー思想と「多数決を原理とする民主主義」の矛盾などについて、ガルトゥング氏の意見を求めた。最後に清水氏は、さきに行われたガルトゥング氏の講演の内容に触れながら、非暴力と暴力、人間安全保障、平和パラダイムについていくつかの問題を提起した。
 中村、長崎、清水3氏の問題提起・質問はきわめて幅広い点にわたったが、ガルトゥング氏はすべての問題に対して丁寧に回答した。平和概念をめぐる中村氏の問題提起については、ガルトゥング氏自身はパクス・ロマーナやパクス・アメリカーナといったことは受け入れないとし、「平和」という言葉をあくまで積極的な意味で用いていることを強調するとともに、直接的暴力も構造的暴力もいずれも否定する「積極的平和」概念について語った。長崎氏が提起したガーンディーの評価についてガルトゥング氏は、ガーンディーがその人生において8つもの紛争(インドの独立、貧困解消、カースト制度、ジェンダー差別など)に取り組んだとし、その際に対立する2集団間の妥協点を探るという「紛争転換(conflict transformation)」を目指していたことが重要だ、とした。また、指導者の持つ人間性によって、支配される民衆が指導者による支配の正統性を認めるというグルオークラシー(ガルトゥング氏による造語)が、インドにおけるガーンディーの統治体制をよく表している、とした。清水氏が提起した問題・質問は多岐に渡り、その一つ一つに対してガルトゥング氏は意見を述べているが、ここではその中の文化的暴力の概念を紹介すると、氏によればそれは差別や支配を文化的に正当化しようとする考え方である。例としてガルトゥング氏は、西洋がダーウィニズムやキリスト教を用いてオーストラリアでアボリジニ殺戮を正当化しようとしたことがまさにそれにあたる、とした。
 この後、フロアからも?2006年9月に起きたタイの政変や?国際政治における政策的手段としての「制裁」の有効性などについての質問が出され、活発な議論が行われた。
 
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