「囲い込まれるマングローブ湿地−ベトナムにみる私的所有権の導入とコモンズの悲劇」
<第4班第2回研究会>
■報告者 :鈴木伸二 龍大社会学部講師
■開催場所 :龍谷大学深草キャンパス 紫英館第1会議室
■開催日時 :2006年10月21日(土)15:00-18:00
■議事録番号 :060402
【報告の概要】
報告者は、中国国境に近いベトナム北部クァンニン省の調査村にて村人の間で人民委員会幹部(政治エリート)に対する不信感が強いことに興味を持ち、この不信感がいかに形成されたかについて、資源管理の「コモンズ論」を援用し、村のマングローブ湿地における土地利用の状況を分析した。
村は、中越紛争期に中国人居住者が立ち退いた跡地に1979年、ベトナム南部からの集団移住によってできた行政村である。村のマングローブ湿地帯には食材として利用される経済的価値の高い水棲動物が生息するが、1992年にこうした動物の中国への輸出が開始されると、多くの村人がマングローブ湿地で水棲動物の採集を行うようになった。
一方、ドイモイ政策後に施行された1993年の土地法改正により、村ではマングローブ湿地の土地配分が行われた。その際に土地使用権の大部分を取得した村の政治エリートたちは、マングローブ湿地を囲い込み、そこに大規模なエビ養殖池を建設した。逆に土地配分で使用権を取得できなかった大多数の村人は、土地配分の対象外となった残りのマングローブ湿地で水棲動物の採集を行わねばならなくなった。このようにして、大幅に縮小されたマングローブ湿地で多くの村人が採集を続けることになったために、深刻な資源枯渇の問題が生じた。その結果、政治エリートとそれ以外の村人との間で軋轢が発生したのである。

【議論の概要】
 参加者からは、村人の志向性がマングローブ湿地の共同管理ではなく、個々人の利益追求の方へと強く偏向しているようにみえるのは、この村が入植地であり、村人が共通の文化資本を持っていないことと大いに関連しているのではないかとの意見が出た。さらに、村人の出身村など、ベトナム国内の他の農村における資源管理の状況はどうかという質問もあった。
■資料詳細 <資料1> <資料2
 
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