「タブロイド地政学のヘゲモニー―アメリカ・西欧はなぜ紛争、暴力としてのアイデンティティ、文化的押付けを超えて国際関係を考えることができないか」
<2006年度第3回国際ワークショップ 「近代性、暴力、社会変動」>
■報告者 :フランソワ・デブリクス (フロリダ国際大学国際関係学部)
■開催場所 :龍谷大学瀬田学舎智光館B103共同研究室
■開催日時 :2007年1月29日(月)11:00-18:00
■議事録番号
ディスカッサント:土佐弘之(神戸大学大学院国際協力研究科教授)

 デブリクス氏は、とりわけ9/11以降、アメリカのタブロイド紙や政治問題に関するテレビ番組のトークショウといった大衆向けメディアが、単純すぎる現実理解と「他者」に対する恐怖心をアメリカ国民に植え付けるのにいかに成功しているか、を「タブロイド地政学」という概念を用いて論じた。タブロイド地政学が伝えるイメージや言説は、自らの優越意識と迫り来る恐怖という危機意識の双方をアメリカ国民の間に広めた。その結果、迫り来る危機に対して暴力を用いて自分たちを守らなければならないという国民感情が作り出されるとともに、危機が実際には存在していなくても先手を打って攻撃を仕掛けることが正当化されることになった。デブリクス氏は、大衆向けメディアを通じて他者に対する誤ったイメージが作り出され流布されているアメリカの現状を批判的に考察し、タブロイド地政学の言説に対する異議申し立てを行なっていくことの重要性を強調した。
 ディスカッサントの土佐氏は、映画「スターウォーズ」などハリウッドの人気映画に象徴されるような大衆向けメディアがどうしてこれほど人気を博しているのかについて、大衆向けメディアが伝えようとするメッセージのわかりやすさと市場価値の高さを指摘した。その上で、大衆向けメディアがこれほど人々に受け入れられるようになった中で、知識人一般に対する反感や真剣な知的営為に対する大衆や一部の政治家からの批判に対して、アカデミックな世界の人間はどう対処すべきなのか、さらには、図表を用いて単純化し視覚的にわかりやすい解説をすることが一般向け雑誌では標準的なこととされるようになった中で、図表を用いずに現代世界の事象を人々に対してどのようにして説明していくことができるのか、といった点について問題提起した。
 デブリクス氏は、大衆向けメディアはアメリカだけではなく西洋社会全般において1980年代以降広く受け入れられ、人気を博するようになったと補足しながらも、アメリカにおいてタブロイド地政学がヘゲモニーを確立した背景にはアメリカ特有の要素もあるとし、その要素として保守主義的傾向や使い捨て文化などを指摘した。知識人に対する大衆からの反感にどう対処するかについては、エリート文化の復興を図ろうとするのではなく、タブロイド地政学を皮肉たっぷりにパロディ化するなどの方法を用いて、タブロイド地政学が抱える問題を浮き彫りにしていくことが一つの対抗手段となるだろう、とした。
■資料詳細 
 
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