「人命救助と権力闘争―冷戦終結以後の軍事介入に対する正当化の議論を中心に」
<2007年度第2回合同研究会「紛争解決と国際倫理の構築に向けて」(共催:日本平和学会関西地区研究会)>
■報告者 :上野友也(日本学術振興会特別研究員PD、神戸大学大学院)
■開催場所 :龍谷大学深草学舎紫英館5階会議室 
■開催日時 :2007年9月16日(日)12:30−17:00 
■議事録番号 :070916
司会:足立研幾(立命館大学国際関係学部准教授)
ディスカッサント:初瀬龍平(京都女子大学現代社会学部教授)

【報告の概要】
報告者の上野友也は、人道支援をするための武力行使は許容されるかどうかについて、規範理論(normative theory)の視点から考察を試みた。

人道的介入の正当化に関する最も根源的な問いは、最上敏樹が提起しているように、絶対平和と絶対倫理のディレンマをどう考えるかである。すなわち、「人助けのために、人を殺すことは許されるのか」という問いである。絶対平和の立場は、「人助けのために、人を殺すことは許されない」というもので、被害者を見殺しにする可能性がある。一方、絶対倫理の立場に立てば、「人助けのために、人を殺すことは許される」ため、救済者が加害者になるという皮肉的な結果が生じる可能性がある。

まず、上野氏は、人道的介入の定義、目的と手段、事例を述べ、「他国の被害者を救済するために、危害を加えている加害者に対して、国境を越えて危害を加えることができるかどうか」という問いに対する現実主義、絶対平和主義、正戦論の議論を概括した。そして、上野氏は、人道的介入の正当化の根拠として、国際法(多元主義と連帯主義に基づく解釈)と正戦論の基準(「保護する責任」)に着眼し、それぞれの正当化に関する限界を指摘した。

その上で、1)大国が主導する人道危機に対応した新たな国際法が形成される可能性があるものの、その秩序は既存の国際秩序の弊害を例外的に矯正する手段としての機能しか提供しないことを主張した。また、2)人道支援機関による人道支援が一般的措置であるのに対して、人道的介入は、あくまで例外措置であること、したがって、3)「他国の被害者を救済するために、危害を加えている加害者に対して、国境を越えて危害を加えることができるかどうか」という問いに対する回答を見出すためには、「保護する責任」の基準などを考察するだけでは不十分であり、武力紛争での人道支援機関による活動の可能性と限界を探求する必要がある旨を強調した。

【議論の概要】
討論者の初瀬龍平は、人道的介入に関する慣習法を否定している一方、他方で、事例や判例を集めている結果、ある意味で慣習法的な分析になっているのではないか、と質問した。すなわち、上野氏自らが人道的介入という例外措置を積み重ねているのではないか、ということである。また、「人助けのために、人を殺すことは許されるのか」という問いの背後に隠れている問題は、「誰が殺されるのか」という問題である。初瀬氏は、危害を加えている加害者はもちろんのこと、介入する側の軍隊も「殺される」のであって、そこに国益が絡んでいるのではないか、と問うた。

さらに初瀬氏は、上野氏だけでなく、他の報告者である池田氏および清水氏に対しても、倫理・価値・規範・道徳という言葉が報告で出てくるものの、それらを国際関係論の文脈で具体的にどう考えるか、たとえば、個人が主体となる倫理と集団が主体となる倫理とでは異なるものであるが、それをどう捉えるのかなど、議論が活発となる質問がなされた。

フロアーとの討論では、アフガニスタンでは人道援助のNGOと軍隊が協力しているという現実をどう評価するか、また、保護される権利は限定的な範囲をともなっているのではないかなど、大いに議論が盛り上がった。
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