「タンザニアにおける土地所有権―『1999年村土地法』の規定と村の実態を題材に―」
<2007年度第4班第3回研究会>
■報告者 :雨宮洋美 富山大学経済学部准教授
■開催場所 :龍谷大学深草キャンパス 紫英館6階会議室
■開催日時 :2007年10月20日(土)15:00-18:30
■議事録番号 :070403
【報告の概要】
本報告は、農業を中心とするアフリカの村における土地に対する権利とはどのようなものであるかについて、近年タンザニアにおいて制定された「1999年村土地法」(The Village Land Act, 1999)の規定内容および実態を通じ考察することを目的としている。
 村土地法は、タンザニアを含むアフリカ諸国に多大な影響を与え続ける世界銀行の政策と圧力、そして慣習的な営みを中心とするタンザニアの村の実情との中庸をいく形で制定された法である。この法の特徴は、「慣習的使用権」と入会地「共同体の村土地」を制定法化したところにある。村土地に対する管理権限は村評議会にある。なお、「慣習的使用権」は家族等の団体をも含む村共同体構成員を権利主体とする、慣習に基づいて認められる権利である。村人に認められるのは使用、収益権であり処分権は限定的に認められるのみであるが、後述の「共同体の村土地」に対する権利と比べると専属的な使用のもとの個人的な権利である。また「共同体の村土地」は、村共同体構成員のみが使用・収益権を有する入会地であり、個々の村人に処分権はない。
 このような規定をおく目的は、タンザニア農村部の土地の村共同体外への流出を阻止し土地のセイフティ・ネット機能を保つことにある。なお、タンザニア都市部の土地に対しては「1999年土地法」による近代的所有権に近い内容の規定が定められている。
 村土地法の施行状況をみてみると、施行後あまり時間が経っておらず(2001年施行)、また、行政側の財源や人員の不足といった事情も加わり、実質的な施行はほとんど行われていない。従って、今後さらに施行状況を観察していく必要がある。
 慣習を拠りどころとし村共同体を中心とした土地の営みがなされ、かつ市場経済化を迫られているという状況は、アフリカを含め多くの発展途上国に見られることである。こうした村落の多くが急進的な土地の私有化を迫られている現状のなかで、タンザニアの「村土地法」は、完全な市場経済化路線ではない現実的な選択の一つとして示唆に富む法だと考えられる。

【議論の概要】
コメンテーターの池野氏は、現在のタンザニアにおける「村」がそもそも慣習村ではなく、政府がいくつかの慣習村をまとめてつくった行政村であることからして、そのような近代的な行政組織の末端にすぎない村を担うべきなのは、慣習法ではなく近代法ではないか、との見方を示した*。
 また、現地の言葉に「慣習法」にあたる表現があるかどうかを尋ねる参加者からの質問もあった。これに対し、報告者は「ないとはいえない」と答えた。報告者は、この点に関して、法規定および実態から読み取れる規定について日本法にあてはめ比較するということを行っているが、全体的な所有権構造および所有権概念を捉えることが重要であり、言葉や用語それ自体が重なるか否かは重要ではないであろうとの意見を述べた。

* 定義に関する報告者からの補足:慣習に基づく不文律のものを含めた規律を慣習法と呼ぶ。近代法と一般に言うときはその国の制定法(当然に国家が定めている法)のことを指すことから村内にある慣習にもとづく規定は近代法と呼ばれる範疇にはない。なお、「村土地法」規定が既存の慣習に基づき制定されていることが立法過程および実態調査より明かになっている(詳細は雨宮2005を参照のこと)。

参考文献
雨宮洋美.2005.博士論文『タンザニアの「1999年村土地法」にみる土地所有権の構造』名古屋大学(未刊行)
■資料詳細 <資料1
 
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