「水利用をめぐる開発と紛争―南インドを中心に―」
<第2班第3回研究会>
■報告者 :中村尚司(龍谷大学)
■開催場所 :京都大学東南アジア研究所・東棟2階第一セミナー室(207)
■開催日時 :2007年6月24日 (日曜日) 午後1時−午後5時半
■議事録番号 :07020302
 報告者の中村氏は、1990年代以降世界各地で開発事業の進め方をめぐって地域的な紛争や内戦が頻発していると指摘したうえで、開発にともなう紛争の事例として、南インドにおける水利用を取り上げて検討した。
 中村氏によると、南インドには、不安定な降水量と微地形という地理的条件を背景として、雨水をできるだけ多く溜池に貯水し繰り返し活用したいという水利思想が根付いている。そのため南インドの水利システムには、水の循環(溜池―用水路―圃場―排水路―溜池という連鎖と、溜池同士の連関)という特徴がある。また、南アジアの灌漑農業地域に共通する特徴として、多目的の水利用が挙げられる。
 現在南アジアでは、過剰な水利開発への指向が生み出す危機が深まりつつある。各地で、ダムなど大規模灌漑プロジェクトの開発主体と地域住民との対立が激化している。また南インド各地では電動ポンプの普及によって浅井戸間で水源を奪い合う相互交渉が見られるようになった。これらの紛争に対しては、既存の小規模な溜池の水利用の合理化や改良工事などを行っていくという方向転換の模索が必要であると同時に、今後は住民参加の水利組織が大きな役割を果たすべきである。そして中村氏は結論として、さらに、非灌漑農業の振興が肝要だと述べた。
 ディスカッサントの脇村氏は、中村氏がかつて論じた「過去の労働の蓄積形態」論に言及し、インドにおけるサービス部門の分厚さという特徴が、農繁期に水の供給を行うために余剰労働力が必要だというインド特有の生態的要因に起因するという自身の見解の是非を問うた。それに対して中村氏は、水利思想や水利システムが必ずしも生態学的条件のみによって一義的に決定するわけではないことを示唆した。
 ディスカッサントの水野氏は、大規模な紛争に対して共同体内の住民参加の管理システムだけで対処できるのかどうかという疑問を呈した。それに対して中村氏は、もちろん共同体内だけで問題が解決できるわけではなく、むしろ「よそ者」が関わっていくことが重要だと指摘した。
 討論では、南アジアにおける資源共同管理の歴史の問題や、電動ポンプの普及が村落社会構造の変動を引き起こす可能性、溜池の構造の問題、日本の入会地が社会的排除の手段として機能してきた側面、などが議論された。
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