「改宗を支える夢見―南インドの移動民社会をとりまく宗教対立と融和の諸相」
<第1班第4回研究会>
■報告者 :岩谷彩子(龍谷大学アフラシア平和開発研究センター博士研究員)
■開催場所 :龍谷大学瀬田学舎智光館B102共同研究室
■開催日時 :2008年1月25日(金)14:30-18:00
■議事録番号 :080125
ディスカッサント: 藤原久仁子(京都大学人文科学研究所講師(研究機関研究員))

 岩谷氏の報告は、南インドの移動民ヴァギリの社会における夢見を事例として、夢を語ることを通じて宗教的なコンフリクトを回避することの可能性を探る試みであった。一般的には、みずからが属する宗教コミュニティに関連する特定の象徴(例えば、イエス)が夢に登場した場合、その夢を仲間内で信仰告白として語り確認しあうことは、信仰主体の形成につながると考えられる。しかし夢を語るという実践が日常的に行われてきたヴァギリ社会では、夢の解釈の自由度が非常に高く、夢が語られる文脈によっては宗教的な意味の薄い表象(例えばリス)にも意味が付与されるため、単一の信仰主体が形成されるとは限らない。夢解釈の可塑性が保たれることで、彼らが覚醒時に直面するさまざまな他者とのコンフリクトが夢のなかで再現され、さらにそれが自分たちの神の出現として読み替えられ、乗り越えられることが可能となるのだ。またヴァギリは「悪い夢」をみた場合に、個人あるいは家族や集団単位で居住地を変えるという習慣をもっており、現実社会でのコンフリクトが夢の中で再現されることによってコンフリクトから距離を置くことにつながるケースがみられる。このように、夢見がコンフリクトの軽減や回避をもたらし得ることを、岩谷氏は強調した。
 ディスカッサントの藤原氏は、まず信仰告白には告白者自身の内面の吐露という側面と同時に信仰告白という場に居合わせる他者への応答という側面もあるのではないか、また曖昧な語りを分析・解釈する際の方法論を明確にすべきではないか、といったコメントを行った。
 討論では、宗教紛争の背景となる信仰主体の形成・強化という問題と共同体や家族の内部のコンフリクトの問題とは分けて考えるべきではないかといった意見が出された。
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