「2008年度特別講演:「大国中国」と新日中関係」
■報告者 :毛里和子(早稲田大学政治経済学術院教授)
■開催場所 :龍谷大学深草学舎3号館101教室
■開催日時 :2008年6月21日(金)
■議事録番号 :080621
【報告の概要】
GDP年成長率10%を維持する中国は、IMFの資料によれば、世界で4位のGDP総額となっており、5年後には日本(現在2位)とドイツ(現在3位)を抜いて、世界2位になると予想されている。グローバルに台頭しつつある中国と日本は、どのような関係を築いていけばよいのだろうか。

まず、講演者の毛里和子氏(早稲田大学政治経済学術院教授)は、日中関係を「戦略的友好期」(1970年代)、「安定期」(1980年代〜1990年代半ば)、「構造変動期」(1990年代後半〜2004年)、「脱72年体制期」(2005年〜)という4つの段階に区分した。そのうえで、これまでの35年間の日中関係は、ルールや制度といった「条理」ではなく、感情やリーダーの人格等の「情理」で動いてきたため、大変脆い関係にあると指摘した。したがって、この脆さをどう変えていくかが、今後の日中関係における課題となる。

日中関係は、貿易の側面に着目すれば、相互依存の度合いが深化している状況にある。たとえば、日本にとって中国は、輸入対象国の中で1位であり、輸出対象国としては2位となっている。しかし他面で、日本人の対中イメージと中国人の対日イメージは、ともに悪化の傾向にある。この背景の1つとして、日本政府の歴史認識が関わっていると毛里氏は述べた。

また、毛里氏は、日中間におけるイシューが「価値」、「パワー」、「利益」の3層構造となっていることを指摘した。それゆえ、新しい日中関係を築き上げていくためには、著書『日中関係―戦後から新時代へ』(岩波新書、2006)の中でも提言されているように、イシュー別チャネルの設置等、6つの具体的な措置をとることが求められていると主張した。そして、2008年5月の胡錦濤首席の訪日については、共同プレス発表において、二国間の制度化と多国間の協力化に関する項目があることから、日中関係が「情理」から「条理」へと移行しつつあるのではないかと述べた。

最後に、チベットや大地震など中国問題がグローバル化するなかで、日中が協力して、「人の安全」にかかわるアジア地域協力機構のメカニズムを作り上げていかねばならないと述べて、講演を締めくくった。

【議論の概要】
コメンテーターの濱下武志氏(龍谷大学国際文化学部教授)は、1)中国の経済発展における政治的側面とはいかなるものか、2)対日認識を主導している中国の中間層とはどのような人たちなのか、3)日中関係における米国という要素をどう考えるか、4)中国がもつソフトパワーについてどう考えるか等の質問を行った。

また、フロアーからは、東アジア共同体と中国との関係について、また、チベット問題をどう捉えることができるのか等の質問がなされ、特別講演会は大いに盛り上がった。
■資料詳細 
 
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