「E・H・カーの残像―英国学派における3つのイメージ像―」
<第1班第3回研究会>
■報告者 :佐藤史郎 (龍谷大学アフラシア平和開発研究センター博士研究員)
■開催場所 :龍谷大学瀬田学舎智光館B102共同研究室
■開催日時 :2008年9月19日(金)14:30-18:00
■議事録番号 :080919
【報告の概要】
 報告者の佐藤史郎氏は、英国学派の方法論の1つである「現実主義と理想主義との対立を超えて(Beyond Realism vs. Idealism)」の生成と分岐について、その過程と意味合いを検討した。
 E・H・カーは、国際関係理論の研究者、歴史理論の研究者、ロシア・ゾヴィエト地域研究者という、3つの研究者の顔をもつ。さらに、国際関係理論の研究者としてのカーは、現実主義者、現実主義者+理想主義者、理想主義者の3つのイメージ像に分類される。この3つのイメージ像は、主として観察者の主観に基づく弁別の結果ではあるが、M・ワイトが『国際理論』で提示した「3つのR」、すなわち現実主義(Realism)、合理主義(Rationalism)、革命主義(Revolutionism)というパラダイムが存在しているがゆえに、弁別は客観的に可能となる、と佐藤氏は指摘した。
 ワイトの「3つのR」は、「現実主義者としてのカー」を否定すべく、現実主義と革命主義(理想主義)の併存状況を前提として、その中庸を目指した論理である。これに対してカーは、『危機の二十年』において、現実主義と理想主義の双方を否定することにより、新たな次元での中庸を模索した。要するに、ワイトとカーは、方法論として三分法を採用してはいるものの、その論理展開は大きく異なっているのである。この三分法の論理における分岐は、依然として英国学派に強く引き継がれている。たとえば、ワイトの論理は国際社会と国際秩序をめぐる研究に、カーの論理は世界社会と世界秩序をめぐる研究に、大きな影響を与えているのである。

【議論の概要】
 議論では、三分法における中庸と弁証法の明確な相違点は何か、理想主義と現実主義の弁別は時代を超越したものであるのかどうか等、分析用語に関する質問が集中した。また、ナショナリズムに関する議論も行われ、カーのナショナリズムに対する認識は、第二次世界大戦前と後での著作では何が変わり・変わらなかったのか、興味深い質問がなされた。そして、ネイション形成に関する国際関係理論はあるのかどうかについても質問がなされ、E・H・カーの著作を軸として、国際関係論と地域研究を繋ぐ視点が模索された。
■資料詳細 
 
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