「非暴力と対話の実践」
<第1班第4回研究会>
■報告者 :本條晴一郎(東京大学東洋文化研究所、リサーチ・フェロー)
■開催場所 :龍谷大学瀬田学舎智光館B103共同研究室
■開催日時 :2008年11月21日(金)14:30-17:30
■議事録番号 :081121
【報告の概要】
 報告者の本條晴一郎氏は、ガンディー(Mohandas Karamchand Gandhi)の非暴力と対話の実践から、紛争当事者間のやり取りが持つ機能について検討した。本報告は、暴力/非暴力の観念的意味に留まらず、そこに行動制御の概念を用いることによって、紛争当事者の行動選択(暴力/非暴力)やその実践的意義に注目した。問題対処における実践的意義の違いは、本質的には臆病/勇気の違いでありこれは心情のみならず、事前制御(リスク回避)/事後制御(問題対応)という制御の観点から捉えることが出来る。
 このような分析を踏まえ、報告者は次の2人の理論を検証した。ひとりはガンディーであり、「真の独立への道(Hind Swaraj)」と非暴力不服従運動におけるロジカルな実行機能や方法としての対話に着目した。もうひとりは、ガンディーと対称的なファノン(Frantz Fanon)であり、「地に呪われたる者(Les Damnés de la Terre)」の暴力論で展開された、精神回復における暴力の心理的機能に注目した。さらに暴力発動のメカニズムについても検討がなされ、危険な情況に対する先天的な情動反応という心身相関性やそこでの身体制御の限界も示された。一方で後天的に経験した危険情況については、学習により情況認識や客観性を高めることによって、正しい情況判断に基づき問題対処する、「勇者の暴力から勇者の非暴力」への転換の可能性について示唆された。
 このような科学分析や理論検証に基づいたうえで、当事者間の紛争解決を図るには、対話を通じたやり取りが必要であり、各々の文脈で利益を損わないような事後制御(「勇者の非暴力」)が有効ではないかと述べた。

【議論の概要】
 討論では、欲望の認識についてアダム・スミスの議論も踏まえ、ガンディーの実験の失敗のひとつは制御の対象に身体的欲望を含めたことにあるのではないか、という指摘がなされた。また、勇気の定義について議論がなされ、臆病に対する勇気は妥当であるのか、精神の脱植民地化が勇気であるのか、勇気とはネゴシエーション・スキルなのか、などの質問がなされた。ガンディーの活動の検証を通して、真理(サッティヤ)に至る方法を堅持することこそが勇気なのではないか、との指摘がなされた。
 
■資料詳細 
 
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