「日本の高等教育にみられる変容:イデオロギー的な改革、向上、標準」
<第3班第1回研究会>
■報告者 :Robert Aspinall(滋賀大学経済学部教授)、石川真由美(大阪大学国際交流室准教授)、Greg Poole(多摩大学グローバルスタディーズ学部教授)、William Bradley(龍谷大学国際文化学部教授)
■開催場所 :龍谷大学瀬田学舎 智光館地下B103-104共同研究室
■開催日時 :2009年6月25日(木)13:00-16:30
■議事録番号 :090625
【報告の概要】

今回の研究会の目的は、日本の高等教育にみられる変容について、イデオロギー的な「改革(reform)」、「向上(improvement)」、および「標準(standard)」をキーワードとして、様々な観点から議論することにあった。

まず、Robert Aspinall氏(滋賀大学経済学部教授)は、「Is MEXT trying to achieve “dynamism without risk” in the national and public university sector? An examination of the critique provided by the 2009 OECD report on Higher Education in Japan」と題して、日本の高等教育を検討した。Aspinall氏は、国際競争力をもつ大学にしたいと考えている教職員を、日本のどれだけの大学がかかえているのかを問うた。そのうえで、2009年のOECD報告書、とりわけ日本には戦略的計画が欠けているとする批判箇所について考察した。

次に、石川真由美氏(大阪大学国際交流室准教授)は、「Making global universities in Japan?: Dominant models in higher education and new dimensions of knowledge construction」と題する報告を行った。石川氏は、高等教育のグローバルな過程において、ヘゲモニーが表出しつつあること、加えて、知の新しい次元が構築されつつあることを指摘した。そして、日本の大学のランキングは、国内ではなくグローバルな文脈の中で、決定付けられていると述べた。

3番目の報告者であるGreg Poole氏(多摩大学グローバルスタディーズ学部教授)は、日本の高等教育における国際教育プログラムについて検討を試みた。報告題目は「‘International education’ in Japanese higher education: The ideal of critical literacy and the reality of cultural practice」である。Poole氏は、国際教育と批判的読み書きを関連付けることで、教育学の目的(教育と学習の実践)と組織の目的(学校運営の実践)との間には深い溝があることを指摘した。

最後に、William Bradley氏(龍谷大学国際文化学部教授)は、「Competing models of improvement and reform: Excellence and the social observer」というタイトルのもとで報告を行った。日本の大学は、独自の専門化とブランドを構築するよう、文科省によって奨励されている。また、日本の大学が直面している共通の課題は、生き残りと自立の維持である。Bradley氏は、日本の高等教育改革における規範モデルに着眼して、そのモデルの中で隠れている様々なコンフリクトについて分析した。


【議論の概要】

コメンテーターのDavid Blake Willis氏(相愛大学人文学部教授)は、今回の研究会の題目である「日本の高等教育にみられる変容(Changing Higher Education in Japan)」について、「変容」と「高等教育」の定義を明確にしたうえで、議論を展開すべきであると指摘した。また、研究会のキーワードである「改革」、「向上」、「標準」とは果たして何を意味するのか、その定義を明らかにしなければならないことはもちろんのこと、誰がその定義づけを行っているのか―たとえばOECDが主体なのか―という点にも着目しなければならないと述べた。そのほか、現在、日本の高等教育においては「交流」や「共生」がキーワードとなっているが、今後のキーワードはどのようなものになるかなどの質問を行い、議論を大いに盛り上げた。
■資料詳細 
 
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