「アフリカン・ピア・レビュー・メカニズム(APRM)の進捗と停滞」
<第4班第3回研究会 (龍谷大学社会科学研究所指定研究と共催)>
■報告者 :望月 克哉 (アジア経済研究所)
■開催場所 :龍谷大学 深草キャンパス 紫英館2階 第1共同研究室
■開催日時 :2009年7月11日(土)
■議事録番号 :090403
【報告の概要】 
 80年代の構造調整プログラム以来、アフリカでもガバナンスが注目されるようになったが、2002年7月に南アフリカの都市であるダーバンで開催されたアフリカ連合(African Union: AU)首脳会議で民主主義、政治的・経済的・企業ガバナンスに関する宣言とともに基本文書が採択され、正式にアフリカン・ピア・レビュー・メカニズム(APRM)が導入された。このAPRMのプロセスを検討することによって、アフリカ諸国のさまざまな問題点が見えてくる。

 APRMは、?民主主義と政治的ガバナンス、?経済的ガバナンスとマネジメント、?企業ガバナンス、?社会・経済開発、という4つのテーマ領域に資する政策、法制等の推進を目指している。直接的な担い手となる、AU、アフリカ開発のための新パートナーシップ(New Partnership for Africa’s Development: NEPAD)ばかりではなく、関係支援国・機関、市民社会を含む民間部門がこのプロセスに関わる事が謳われており、実際の運用においてもこれら主体の参画を促す仕組みが準備されている。

 2003年3月、NEPAD首脳実行委員会はAPRMに関する覚書(MoU)を採択し、参加国の署名を開始した。覚書へ署名した後、加盟国首脳で構成される委員会(通称「APRフォーラム」)で承認され、レビュー・プロセスが開始される。レビューは第1段階:自己評価、第2段階:国別レビュー・ミッションの派遣、第3段階:国別レビュー報告書の作成と行動計画の修正、第4段階:ピア・レビューの実施、第5段階:国別報告書・行動計画の公表、といった5つの段階として整理されており、APRMの調整と運営のために設置された事務局(通称「APR事務局」)との共同作業で進められる。

  しかし、覚書署名後も自動的にレビュー手続きが開始されるわけではなく、第一段階での作業とされている自己評価報告書(Country Self-Assessment Report: CSAR)ならびに行動計画書(Programme of Action: PoA)のドラフト作成が、次の段階に進む前提とされている。このため、APRMに参画している国連アフリカ経済委員会(Economic Commission for Africa: ECA)などは、この段階を「準備段階(Preparatory Stage)」とみなしている。さらに、ピア・レビュー完了後も、1年以内の年次報告、年2回の進捗報告が義務付けられている。南アフリカ政府は、国別レビュー実施のため国内向けに作成したAPRMの解説文書で、このフォローアップを「第6段階:進捗の継続的評価」と位置づけている。

 このように、非常に煩雑で膨大な時間とコストのかかるレビュー・プロセスの中で、最初にピア・レビューを完了させたガーナはAPRM事務局からも「モデル国」とみなされており、国別報告書・行動計画公表後の「年次報告」、年2回の進捗報告なども、遅滞なく提出している。しかし、同国の順調な進捗は例外的といえ、APRMは総じて遅滞しているように見受けられる。この背景には、?レビュー・プロセスが複雑であるために各種レビュー作業や関連手続きが複雑化しているばかりでなく、対象国政府の関連組織も肥大化して、政府内調整に混乱をきたしている、?APRMのメカニズムとしての母体はNEPADであるにもかかわらず、APRMを推進し、その成果を活用する責務を担うのはAUとなっているというAPRM運営の二重性、そして?APRM事務局の「官僚機構化」に伴う業務効率の低下、といった問題がある。さらに、レビュー・プロセスが停滞している締約諸国については、それぞれ固有の事情があり、そこには政治的理由や財政事情が大きく作用していると思われ、今後の動向が注目される。


【議論の概要】
 トーゴのように、近年になってから加盟した国々はAPRM手続きが骨抜きになるのを待って覚書を交わしているという印象を受け、レビュー・プロセス手続きの複雑化も恣意的であるように受け取れる、というコメントが出された。また、APRMに参加することで、またプロセスを終了することで、どのようなメリットがあるのか、APRMへの加盟はドナー国に対する単なるポーズなのか、といった疑問が出された。さらに、OECD開発援助委員会(DAC)のピア・レビューと比べると、DACの方はポイントが絞られており、提出するデータも少ない。そもそも民主化とガバナンスをレビューすることが目的であったはずのAPRMが、なぜこのように広範なレビューになってしまったのか、また、どのようなデータをどのように標準化して評価が行われているのか、といった疑問点が挙げられた。
■資料詳細 
 
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