「グローバリゼーションと国際人口移動:受け入れ国・送り出し国・移民自身の利益の最大化へむけて」
<第3班第3回研究会>
■報告者 :浅川晃広(名古屋大学国際開発研究科講師)
■開催場所 :龍谷大学瀬田学舎 智光館B103-104共同研究室
■開催日時 :2009年7月14日(火) 13:30〜15:00
■議事録番号 :090714
【報告の概要】

 マリア・レイナルース・D.カルロス氏(龍谷大学准教授)の司会のもと、浅川晃広氏をお招きし、「グローバリゼーションと国際人口移動:受け入れ国・送り出し国・移民自身の利益の最大化へむけて」と題してご報告いただいた。

 浅川氏は、グローバリゼーション下において、受け入れ国・送り出し国・移民自身の三者の利益を最大化する、「Triple Win」の国際人口移動のマネージメントの必要性を主張する。

 浅川氏によれば、今日の国際人口移動は、低開発国と先進国の年齢別人口構成の相違と、通信・交通手段の飛躍的な発達に起因する現象である。こうしたグローバリゼーション下のヒトの移動の増大に対処するには、国家の本質的役割である「入国管理」が、より一層重要になると指摘する。ただし、EUの例からもわかるように、多国間協力は事実上困難であるため、二国間での協力関係の構築が望ましいという。

 送り出し国にとって、移住労働者からの送金は、貧困削減や教育水準の向上など、開発的インパクトがあるため有益であると浅川氏は指摘する。他方、少子高齢化が進む先進国は、補完的に移住労働者を受け入れることが望ましいという。ただし、移住労働者の中長期的な雇用の確保や、公用語能力の教育支援等、政策的介入による「社会統合」の実現が不可欠であると指摘した。

【議論の概要】

 議論は、司会のカルロス氏が、近年の国際的な動向として、「管理される移動(Managed Migration)」――移住労働者の人権が守られ、受け入れ国だけでなく、送り出し国の利益にもなるように、国際移動を国家が管理すること――が浮上していることをまず指摘して始まった。その後議論は大きく二つに分かれた。

 一つは、日本をはじめとする先進国の移民政策の今後のあり方に関する議論である。浅川氏は、日本語能力を始めとした質の高い人材の受け入れ、留学生の新卒雇用など、具体的な提言を述べた。また、「GATTビザ」の失敗等を挙げ、多国間でのコンセンサスは現実的ではないため、二国間協力を中心に、多国間協力を補足的に行なうという使い分けが必要であることを指摘した。また、日系人だけを受け入れる日本の政策の問題を挙げた。

 もう一つは、人の国際移動の現状認識に関する議論である。具体的には、次の四つの論点が挙げられた。(1)送金は、途上国の経済発展につながるのか。この点については、送金が投資されず、消費される傾向があるという悲観的なデータもある、移動できない人との間に経済格差が生じているという指摘があった。(2)途上国は送金によって、外貨依存に陥るのではないか。(3)日本語能力の欠如が「社会統合」の主たる障壁なのか。この点については、日系人の場合は、斡旋業者の介在により、母語だけで生活・就労できる環境が整備されていたため、日本語習得の必要がなかったとの指摘があった。問題は、斡旋業者や会社の倒産によって、彼らが放り出されたことにあるのではないか。(4)日本の「労働力不足」とはどこにあるのか。この点については、「日本で必要な人材」とはどのような人材か、必ずしも明確にされていないとの指摘があった。
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