「2009年度全体研究会」
<「国際政治における国際法の力と機能」>
■報告者 :大沼保昭(明治大学法学部特任教授)
■開催場所 :龍谷大学大宮学舎西黌2F大会議室
■開催日時 :2009年11月27日(金) 16:00〜18:30
■議事録番号 :091127
【報告の概要】
これまで本研究センターは、全体研究会において、コンフリクトの概念と紛争解決に関する理論研究を行ってきた。今回で第6回目となる2009年度全体研究会では、国際法の観点から、コンフリクトを「武力による威嚇又は武力の行使」という意味に限定して、紛争解決の方途を模索した。換言すれば、国際社会における国際法の役割とは何か、また紛争解決における法の役割とは何かについて、である。

講演者の大沼保昭氏(明治大学法学部特任教授)は、「国際政治における国際法の力と機能」と題して、20世紀と21世紀の国際社会とでは何が変わり、何が変わらないのかを述べたうえで、国際法の力と機能とはいかなるものかについて、検討を行った。

大沼氏によれば、20世紀の特徴とは、?認識や解釈の枠組みがきわめて「欧米中心的な世界」であったこと、?物事を国家単位で考えるという「国家中心主義の世界」であったこと、?技術革新による「資本主義的活動が展開した世界」であった(加えて、?「男性中心の世界」であり、?富と精神が局限化された「現世代中心の世界」であった)。

つづいて大沼氏は、21世紀の特徴をつぎのように予想した。第1に、21世紀の世界は、「欧米中心的な世界」から、中国やインドを軸とするアジアの勃興によって多中心主義な世界になると述べた。第2に、「国家中心主義の世界」を支えている主権国家システムは、21世紀も持続するものの、トランスナショナルな主体から様々な挑戦を常に受けることになろう、と指摘した。第3に、(西欧発の)普遍的価値とされるものが、西欧に植民地化されたことで被害者意識をもつ非欧米の人々の世界観や心情と対立する危険性があると述べた。

それでは、上記のような特徴をもつ21世紀の世界において、国際法の力と機能とはいかなるものであろうか。大沼氏は、この問いに答えるべく、われわれの目にみえる国際法の機能と、目にみえない機能とに分けて、議論を展開した。

目にみえる国際法の機能には、国家行動を規制し、紛争解決の機能を果たすという機能、国家間の共通のコミュニケーションの手段などの機能がある。これに対して、目にみえない国際法の機能には以下のようなものがある。国際法は、国際社会の共通価値ないし理解を体現化している(国際正義と国際道徳は、その基準を統一することが困難であるため、紛争を解決しないことが多い)。国際法は、人権に関する条約でみられるように、厳格に守られることはないが、ある程度の点で、人間ならびに国家の行動を規制・収斂させているのである。また、国際法は、普段は機能しているが、それが当たり前として捉えられているため、その重要性がわかりにくい。いわば国際法は「空気」である。わたしたちは、普段の生活において、空気の存在を意識しない。だが、空気のない状況において、はじめて空気の重要性を理解するのである。さらに、国際法は「観念の力」をもっている。すなわち国際法は、わたしたちの思考の枠組みに影響を与えることで、われわれの行動を規定するものとなり、それが積み重なって社会の「現実」を作り出すパワーをもっているのである。

【議論の概要】
フロアーからは、国際法の「みえざる」機能は(国際法という)共通の規範が浸透している範囲のみで「みられる」のではないか、欧米中心的な国際法が他の地域における法に収斂していくのかどうか、(国際法という)普遍性と(ローカルな正義という)地域性をどのように組み合わせて和解を実現していくことができるのか、人道的干渉を国際法の観点からどのように捉えることができるのかなどの質問がなされ、議論は大いに盛り上がった。
■資料詳細 
 
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